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『一代聖教大意』


(★90㌻)
 実に二乗作仏の文無し」文。
  次に円教。此の円教に二有り。一には爾前の円、二には法華涅槃の円なり。爾前の円に五十二位又戒定慧あり。爾前の円とは華厳経の法界唯心の法門なり。文に云はく「初発心の時便ち正覚を成ず」と。又云はく「円満修多羅」文。浄名経に云はく「無我無造にして受くる者は無けれども、善悪の業敗亡せず」文。般若経に云はく「初発心より即ち道場に坐す」文。観経に云はく「韋提希時に応じて即ち無生法忍を得」文。梵網経に云はく「衆生仏戒を受くれば位大覚に同じ。即ち諸仏の位に入り、真に是諸仏の子なり」文。此は皆爾前の円の証文なり。此の教の意は又五十二位を明かす。名は別教の五十二位の如し、但し義はかはれり。其の故は五十二位が互ひに具して浅深も無し勝劣も無し。凡夫も位を経ずとも仏にも成る、又往生するなり。煩悩も断ぜざれども仏に成るに障り無く一善一戒を以ても仏に成る。少々開会の法門を説く処もあり。所謂浄名経には凡夫を会す。煩悩悪法も皆会す。但し二乗を会せず。般若経の中には二乗の所学の法門をば開会して二乗の人と悪人をば開会せず。観経等の経に凡夫一亳の煩悩をも断ぜずして往生すと説くは皆爾前の円教の意なり。法華経の円教は後に至って書くべし 已上四教。
  次に五時。
  五時とは一に華厳経 結経は梵網経、 別円二教を説く。二には阿含 結経は遺教経、 但三蔵教の小乗の法門を説く。三には方等経・宝積経・観経等の説時を知らざる大乗経なり 結経は瓔珞経、 蔵通別円の四教を皆説く。四には般若経 結経は仁王経、 通教・別教・円教の後三教を説き三蔵教を説かず。
  華厳経は三七の間の説、阿含経は十二年の説、方等・般若は三十年の説。已上華厳より般若に至る四十二年なり。山門の義には方等は説時定まらず説処定まらず、般若経は三十年と申す。寺門の義には方等十六年般若十四年と申す。
 
 

平成新編御書 ―90㌻―

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