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『一代聖教大意』


(★94㌻)
  姚興王に対して曰く、予昔天竺国に在りし時、遍く五竺に遊んで大乗を尋討し、大師須利耶蘇摩に従って理味を餐受するに頂を摩でて此の経を属累して言はく、仏日、西に隠れ遺光東北を照す。茲の典、東北諸国に有縁なり汝慎んで伝弘せよ」文。私に云はく、天竺よりは此の日本は東北の州なり。慧心の一乗要決に云はく「日本一州円機純熟にして、朝野遠近同じく一乗に帰し、緇素貴賤悉く成仏を期す。唯一師等あて若し信受せずば権とや為さん実とや為さん。権と為さば貴むべし。浄名に云く、衆の魔事を覚智して而も其の行に随はざるは善力方便を以て意に随って而も度すと。実と為さば憐れむべし。此の経に云はく、当来世の悪人は仏説の一乗を聞きて迷惑して信受せず、法を破して悪道に堕つ」文。
  妙法蓮華経。
  妙とは天台の玄義に云はく「言ふ所の妙とは妙は不可思議に名づくるなり」と。又云はく「秘密の奥蔵を発く、之を称して妙と為す」と。又云はく「妙とは最勝修多羅甘露の門なり、故に妙と言ふなり」と。法とは玄義に云はく「言ふ所の法とは十界十如権実の法なり」と。又云はく「権実の正軌を示す、故に号して法と為す」と。蓮華とは玄義に云はく「蓮華とは権実の法に譬ふるなり」と。又云はく「久遠の本果を指す、之を喩ふるに蓮を以てし、不二の円道に会す、之を譬ふるに華を以てす」文。経とは玄義云はく「声仏事を為す、之を称して経と為す」文。私に云はく、法華以前の諸経に、小乗は心生ずれば六界、心滅すれば四界なり。通教以て是くの如し。爾前の別円の二教は心生の十界なり。小乗の意は六道四生の苦楽は衆生の心より生ずと習ふなり。されば心滅すれば六道の因果は無きなり。大乗の心は心より十界を生ず。華厳経に云はく「心は工みなる絵師の如く種々の五陰を造る。一切世間の中に法として造らざること無し」文。種々の五陰を造るとは十界の五陰なり。仏界をも心法をも造ると習ふ。心が過去現在未来の十方の仏と顕はると習ふなり。華厳経に云はく
 
 

平成新編御書 ―94㌻―

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