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『守護国家論』


(★148㌻)
  第二に受け難き人身を受け値ひ難き仏法に値ふと雖も悪知識に値ふが故に三悪道に堕することを明かさば、仏蔵経に云はく「大荘厳仏の滅後に五比丘あり。一人は正道を知って多億の人を度し、四人は邪見に住す。此の四人命終して後阿鼻地獄に堕つ。仰ぎ臥し伏せに臥し左脇に臥し右脇に臥すこと各々九百万億歳なり。乃至若しは在家出家の此の人に親近せしもの、並びに諸の檀越凡そ六百四万億人あり。此の四師と倶に生じ倶に死して、大地獄に在って諸の焼煮を受く。大劫若し尽きぬれば是の四悪人及び六百四万億の人此の阿鼻地獄より他方の大地獄の中に転生す」已上。 涅槃経三十三に云はく「爾の時に城中に一の尼乾有り。名を苦得と曰ふ。乃至善星、苦得に問ふ。答へて曰く、我食吐鬼の身を得。善星諦かに聞け。乃至爾の時に善星即ち我が所に還って是くの如き言を作す、世尊、苦得尼乾は命終の後に三十三天に生ぜんと。乃至爾の時に如来即ち迦葉と善星の所に往きたまふ。善星比丘遥かに我来たるを見、見已はって即ち悪邪の心を生ず。悪心を以ての故に生身に陥ち入って阿鼻地獄に堕す」已上。 善星比丘は仏の菩薩たりし時の子なり。仏に随ひ奉り出家して十二部経を受け、欲界の煩悩を壊りて四禅定を獲得せり。然りと雖も悪知識たる苦得外道に値ひ、仏法の正義を信ぜざるに依って出家の受戒・十二部経の功徳を失ひ、生身に阿鼻地獄に堕す。苦岸等の四比丘に親近せし六百四万億の人は四師と倶に十方の大阿鼻地獄を経しなり。今の世の道俗は選択集を貴ぶが故に、源空の影像を拝して一切経難行の邪義を読む。例せば尼乾の所化の弟子が尼乾の遺骨を礼して三悪道に堕せしが如し。願はくは今の世の道俗選択集の邪正を知りて後に供養恭敬を致せ。爾らずんば定めて後悔有らん。故に涅槃経に云はく「菩薩摩訶薩悪象等に於ては心に怖畏すること無かれ。悪知識に於ては怖畏の心を生ぜよ。何を以ての故に。是の悪象等は唯能く身を壊りて心を壊ること能はず、悪知識は二倶に壊るが故に。是の悪象等は唯一身を壊り、悪知識は無量の善身無量の善心を壊る。是の悪象等は唯能く不浄の臭き身を破壊し、悪知識は能く浄身及以浄心を壊る。是の悪象等は能く肉身を壊り、悪知識は法身を壊る。
 

平成新編御書 ―148㌻―

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