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『立正安国論』


(★236㌻)
 土を雨らし皆昏闇にして日月も明を現ぜず。四方皆亢旱し、数諸の悪端を現じ、十不善業道・貪瞋癡倍増して、衆生の父母に於ける、之を観ること獐鹿の如くならん。衆生及び寿命色力威楽減じ、人天の楽を遠離し、皆悉く悪道に堕せん。是くの如き不善業の悪王・悪比丘、我が正法を毀壊し、天人の道を損減し、諸天善神・王の衆生を悲愍する者、此の濁悪の国を棄てゝ皆悉く余方に向かはん」已上。
  仁王経に云はく「国土乱れん時は先づ鬼神乱る。鬼神乱るゝが故に万民乱る。賊来たりて国を劫かし、百姓亡喪し、臣・君・太子・王子・百官共に是非を生ぜん。天地怪異し二十八宿・星道・日月時を失ひ度を失ひ、多く賊の起こること有らん」と。亦云はく「我今五眼をもって明らかに三世を見るに、一切の国王は皆過去の世に五百の仏に侍へしに由って帝王の主と為ることを得たり。是を為て一切の聖人羅漢而も為に彼の国王の中に来生して大利益を作さん。若し王の福尽きん時は一切の聖人皆捨去為ん。若し一切の聖人去らん時は七難必ず起こらん」已上。
  薬師経に云はく「若し刹帝利・潅頂王等の災難起こらん時、所謂人衆疾疫の難・他国侵逼の難・自界叛逆の難・星宿変化の難・日月薄蝕の難・非時風雨の難・過時不雨の難あらん」已上。
  仁王経に云はく「大王、吾が今化する所の百億の須弥、百億の日月、一々の須弥に四天下有り、其の南閻浮提に十六の大国・五百の中国・十千の小国有り。其の国土の中に七つの畏るべき難有り、一切の国王是を難と為すが故に。云何なるを難と為す。日月度を失ひ時節返逆し、或は赤日出で、黒日出で、二三四五の日出で、或は日蝕して光無く、或は日輪一重二三四五重輪現ずるを一の難と為すなり。二十八宿度を失ひ、金星・彗星・輪星・鬼星・火星・水星・風星・(●≒刀)星・南斗・北斗・五鎮の大星・一切の国主星・三公星・百官星、是くの如き諸星各々変現するを二の難と為すなり。大火国を焼き万姓焼尽せん、或は鬼火・竜火・天火・山神火・人火・樹木火・賊火あらん。
 

平成新編御書 ―236㌻―

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