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『秋元殿御返事』


(★335㌻)
 又云はく「天の諸の童子以て給使を為し、刀杖も加へず、毒も害すること能はず」云云。諸天とは梵天・帝釈・日月・四大天王等なり。法とは法華経なり。童子とは七曜・二十八宿・摩利支天等なり。「臨兵闘者皆陣列在前」是又「刀杖不加」の四字なり。此等は随分の相伝なり。能く能く案じ給ふべし。第六に云はく「一切世間の治生産業は皆実相と相違背せず」云云。五節供の時も唯南無妙法蓮華経と唱へて悉地成就せしめ給へ。委細は又々申すべく候。
  次に法華経は末法の始め五百年に弘まり給ふべきと聴聞仕り、御弟子となると仰せ候事。師壇となる事は三世の契り種熟脱の三益、別に人に求めんや。「在々諸仏の土に常に師と倶に生まれん」「若し法師に親近せば、速やかに菩提の道を得ん。是の師に随順して学ばゞ恒沙の仏を見たてまつることを得ん」との金言違ふべきや。提婆品に云ふ「所生の処には常に此の経を聞かん」の人はあに貴辺にあらずや。其の故は次上に「未来世の中に若し善男子善女人有って」と見えたり。善男子とは法華経を持つ俗の事なり。弥信心をいたし給ふべし、信心をいたし給ふべし。恐恐謹言。
  正月十一日                      日蓮花押
 秋元殿御返事
  安房国(あわのくに)ほだ(保田)より出だす
 

平成新編御書 ―335㌻―

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