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『法華取要抄』
(★735㌻)
若し爾れば今我等天に向かって之を見れば生身の妙覚の仏が本位に居して衆生を利益する是なり。
問うて曰く、誰人の為に広開近顕遠の寿量品を演説するや。答へて曰く、寿量品の一品二半は始めより終はりに至るまで正しく滅後の衆生の為なり。滅後の中には末法今時の日蓮等が為なり。疑って云はく、此の法門前代に未だ之を聞かず、経文に之有りや。答へて曰く、予が智前賢に超えず、設ひ経文を引くと雖も誰人か之を信ぜん。卞和が啼泣、伍子胥の悲傷是なり。然りと雖も略開近顕遠・動執生疑の文に云はく「然も諸の新発意の菩薩、仏の滅後に於て、若し是の語を聞かば、或は信受せずして、法を破する罪業の因縁を起こさん」等云云。文の心は寿量品を説かずんば末代の凡夫皆悪道に堕せん等なり。寿量品に云はく「是の好き良薬を今留めて此に在く」等云云。文の心は上は過去の事を説くに似たる様なれども、此の文を以て之を案ずるに滅後を以て本と為す。先づ先例を引くなり。分別功徳品に云はく「悪世末法の時」等云云。神力品に云はく「仏の滅度の後に能く是の経を持たんを以ての故に、諸仏皆歓喜して無量の神力を現じたまふ」等云云。薬王品に云はく「我が滅度の後、後五百歳の中に広宣流布して閻浮提に於て断絶せしむること無けん」等云云。又云はく「此の経は則ち為れ閻浮提の人の病の良薬なり」等云云。涅槃経に云はく「譬へば七子あり、父母平等ならざるに非ざれども然も病者に於て心即ち偏に重きが如し」等云云。七子の中の第一第二は一闡提謗法の衆生なり。諸病の中には法華経を謗ずるが第一の重病なり。諸薬の中に南無妙法蓮華経は第一の良薬なり。此の一閻浮提は縦広七千由善那八万の国之有り。正像二千年の間未だ広宣流布せざる法華経を当世に当たって流布せしめずんば釈尊は大妄語の仏、多宝仏の証明は泡沫に同じく、十方分身の仏の助舌も芭蕉の如くならん。
疑って云はく、多宝の証明、十方の助舌、地涌の涌出、此等は誰人の為ぞや。答へて曰く、世間の情に云はく、在世の為と。日蓮が云はく、舎利弗・目犍等は現在を以て之を論ずれば智慧第一・神通第一の大聖なり。
平成新編御書 ―735㌻―
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