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『法蓮抄』


(★811㌻)
 一劫を具足して劫尽きなば復死し展転して無数劫に至らん」等云云。此の大地の下五百由旬を過ぎて炎魔王宮あり。其の炎魔王宮より下一千五百由旬が間に、八大地獄並びに一百三十六の地獄あり。其の中に一百二十八の地獄は軽罪の者の住処、八大地獄は重罪の者の住処なり。八大地獄の中に七大地獄は十悪の者の住処なり。第八の無間地獄は五逆と不孝と誹謗との三人の住処なり。今法華経の末代の行者を戯論にも罵詈誹謗せん人々はおつべしと説き給へる文なり。法華経の第四法師品に云はく「人有って仏道を求めて一劫の中に於て乃至持経者を歎美せんは其の福復彼に過ぎん」等云云。妙楽大師云はく「若し悩乱する者は頭七分に破れ、供養すること有らん者は福十号に過ぐ」等云云。
  夫人中には転輪聖王第一なり。此の輪王出現し給ふべき前相として、大海の中に優曇華と申す大木生ひて華さき実なる。金輪王出現して四天の山海を平らかになす。大地は綿の如くやはらかに、大海は甘露の如くあまく、大山は金山、草木は七宝なり。此の輪王須臾の間に四天下をめぐる。されば天も守護し、鬼神も来たってつかへ、竜王も時に随って雨をふらす。劣夫なんどもこれに従ひ奉れば須臾に四天下をめぐる。是偏に転輪王の十善の感得せる大果報なり。毘沙門等の四大天王は又これには似るべくもなき四天下の自在の大王なり。帝釈は忉利天の主、第六天の魔王は欲界の頂に居して三界を領す。此は上品の十善戒、無遮の大善の所感なり。大梵天王は三界の天尊、色界の頂に居して魔王・帝釈をしたがへ、三千大千界を手ににぎる。有漏の禅定を修行せる上に慈悲喜捨の四無量心を修行せる人なり。声聞と申して舎利弗・迦葉等は二百五十戒、無漏の禅定の上に苦・空・無常・無我の観をこらし、三界の見思を断尽し水火に自在なり。故に梵王と帝釈とを眷属とせり。縁覚は声聞に似るべくもなき人なり。仏と出世をあらそふ人なり。昔猟師ありき、飢えたる世に利(咤-ウ)と申す辟支仏にひえの飯を一盃供養し奉りて、彼の猟師九十一劫が間、人中天上の長者と生まる。今生には阿那律と申す天眼第一の御弟子なり。
 

平成新編御書 ―811㌻―

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