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『高橋入道殿御返事』


(★886㌻)後
 №0206
     高橋入道殿御返事 建治元年七月一二日  五四歳
 
  我等が慈父大覚世尊は、人寿百歳の時中天竺に出現しましまして、一切衆生のために一代聖教をとき給ふ。仏在世の一切衆生は過去の宿習有って仏に縁あつかりしかば、すでに得道成りぬ。我が滅後の衆生をばいかんがせんとなげき給ひしかば、八万聖教を文字となして、一代聖教の中に小乗経をば迦葉尊者にゆづり、大乗経並びに法華経・涅槃等をば文殊師利菩薩にゆづり給ふ。但し八万聖教の肝心・法華経の眼目たる妙法蓮華経の五字をば迦葉・阿難等にもゆづり給はず、又文殊・普賢・観音・弥勒・地蔵・竜樹等の大菩薩にもさづけ給はず。此等の大菩薩等ののぞみ申せしかども仏ゆるし給はず。大地の底より上行菩薩と申せし老人を召しいだして、多宝仏・十方の諸仏の御前にして、釈迦如来七宝の塔中にして、妙法蓮華経の五字を上行菩薩にゆづり給ふ。
 

平成新編御書 ―886㌻―

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