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『高橋入道殿御返事』
(★891㌻)
此の大悪法又かまくらに下りて御一門をすかし、日本国をほろぼさんとするなり。此の事最大事なりしかば弟子等にもかたらず、只いつはりをろかにて念仏と禅等計りをそしりてきかせしなり。今は又用ひられぬ事なれば、身命もおしまず弟子どもに申すなり。かう申せばいよいよ御不審あるべし。日蓮いかにいみじく尊くとも慈覚・弘法にすぐるべきか。この疑ひすべてはるべからず。いかにとかすべき。
但し皆人はにくみ候に、すこしも御信用のありし上、此までも御たづねの候は只今生計りの御事にはよも候はじ。定んで過去のゆへか。御所労の大事にならせ給ひて候なる事あさましく候。但しつるぎはかたきのため、薬は病のため。阿闍世王は父をころし仏の敵となれり。悪瘡身に出でて後、仏に帰伏し法華経を持ちしかば、悪瘡も平癒し寿をも四十年のべたりき。而も法華経は「閻浮提人・病之良薬」とこそとかれて候へ。閻浮の内の人は病の身なり、法華経の薬あり、三事すでに相応しぬ、一身いかでかたすからざるべき。但し御疑ひの御わたり候はんをば力及ばず。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
七月十二日 日 蓮 花押
進上 高橋入道御返事
覚乗房はわき房に度々よませてきこしめせ、きこしめせ。恐々。
平成新編御書 ―891㌻―
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