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『就註法華経口伝』


(★1736㌻)
  御義口伝に云はく、草木成仏の証文に而自廻転の文を出だすなり。是一念三千の依正体一の成仏を説き極めたるなり。草木成仏の証人とは、日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉るを指すなり。廻転とは題目の五字なり。自とは我等行者の事なり。記の五の釈能く能く之を思ふべし云云。
    第六 一時倶作の事
  御義口伝に云はく、一時とは末法の一時なり、倶作とは南無妙法蓮華経なり、倶とは畢竟住一乗なり。今日蓮等の類の所作には題目の五字なり。余行を交へざるなり。又云はく、十界の語言は一返の題目を倶作したり。是豈感応に非ずや。
    第七 以譬喩得解の事  止観五に云はく「智とは譬に因るに斯の意徴有り」と。
  御義口伝に云はく、此の文を以て鏡像円融の三諦の事を伝ふるなり。総じて鏡像の譬へとは自浮自影の鏡の事なり。此の鏡は一心の鏡なり。総じて鏡に付いて重々の相伝之有り。所詮鏡の能徳とは万像を浮かぶるを本とせり。妙法蓮華経の五字は万像を浮かべて一法も漏るゝ物之無し。又云はく、鏡に於て五鏡之有り。妙の鏡には法界の不思議を浮かべ、法の鏡には法界の体を浮かべ、蓮の鏡には法界の果を浮かべ、華の鏡には法界の因を浮かべ、経の鏡には万法の言語を浮かべたり。又云はく、妙の鏡には華厳を浮かべ、法の鏡には阿含を浮かべ、蓮の鏡には方等を浮かべ、華の鏡には般若を浮かべ、経の鏡には法華を浮かぶるなり。順逆次第して意得べきなり。我等衆生の五体五輪妙法蓮華経と浮かび出でたる間、宝塔品を以て鏡と習ふなり。信謗の浮かび様能く能く之を案ずべし。自浮自影の鏡とは南無妙法蓮華経是なり云云。
    第八 唯有一門の事  文句の五に云はく「唯有一門とは上の以種々法門、宣示於仏道に譬ふ〇門に又二あり。宅門と車門となり。宅とは生死なり、門とは出づる要路なり。此は方便教の詮なり。
 

平成新編御書 ―1736㌻―

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