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『就註法華経口伝』


(★1739㌻)
 今日蓮等の類窮困を免離する事は法華経を受持し奉る故なり。又云はく、法華経に値ひ奉る時、八苦の煩悩の火、自受用報身の智火と開覚するなり云云。
    第四 心懐悔恨の事  文句の六に云はく「悔を父に約し恨を子に約す」と。記の六に云はく「父にも悔恨あり、子にも悔恨あり」と。
  御義口伝に云はく、日本国の一切衆生は子の如く、日蓮は父の如し。法華不信の失に依り無間大城に堕ちて返って日蓮を恨みん。又日蓮も音も惜しまず法華経を捨つべからずと云ふべき物をと、霊山にて悔ゆること之有るべきか。文句の六に云はく「心懐悔恨とは、昔勤ろに教詔せず訓ふること無くして逃逝せしむることを致すを悔ひ、子の恩義を惟はず我を疎み他に親しむことを恨む」と。
    第五 無上宝聚不求自得の事
  御義口伝に云はく、無上に重々の子細有り。外道の法に対すれば三蔵教は無上、外道の法は有上なり。又三蔵教は有上、通教は無上。通教は有上、別教は無上。別教は有上、円教は無上。又爾前の円教は有上、法華の円は無上。又迹門の円は有上、本門の円は無上。又迹門十三品は有上、方便品は無上。又本門十三品は有上、一品二半は無上。又天台大師所弘の止観は無上、玄文二部は有上なり。今日蓮等の類の心は、無上とは南無妙法蓮華経、無上の中の極無上なり。此の妙法を指して無上宝聚と説き玉ふなり。宝聚とは、三世の諸仏の万行万善諸波羅蜜の宝を聚めたる南無妙法蓮華経なり。此の無上宝聚を辛労も無く行功も無く一言に受け取るは信心なり。不求自得とは是なり。自の字は十界なり。十界各得るなり。諸法実相是なり。然る間此の文の妙覚の釈尊は我等衆生の骨肉なり。能く能く之を案ずべし云云。
    第六 世尊大恩の事
  御義口伝に云はく、世尊とは釈尊、大恩とは南無妙法蓮華経なり。
 

平成新編御書 ―1739㌻―

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