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『就註法華経口伝』


(★1780㌻)
 流通の品成る故なり。総じて流通とは未来当今の為なり。法華経一部は一往は在世の為なり、再往は末法当今の為なり。其の故は妙法蓮華経の五字は三世の諸仏共に許して未来滅後末法の者の為なり。品々の法門は題目の用なり。体の妙法末法の為たらば、何ぞ用の品々別ならんや。此の法門秘すべし秘すべし。天台の「綱維を提ぐるに目として動かざること無きが如し」等と釈する此の意なり。妙楽大師は「略して経題を挙ぐるに玄に一部を収む」と。此等を心得ずんば末法の弘通に足らざる者なり。
    第十六 此の品の時不軽菩薩の体の事
  御義口伝に云はく、不軽菩薩とは十界の衆生なり。三世常住の礼拝の行を立つるなり。吐く所の語言は妙法の音声なり。獄卒が杖を取って罪人を呵責する体礼拝なり。敢へて軽慢せざるなり。罪人我を責め成すと思へば不軽菩薩を呵責するなり。折伏の行是なり。
    第十七 不軽菩薩礼拝住処の事 十四箇所の礼拝住所の事之有り
  御義口伝に云はく、礼拝の住処とは多宝塔中の礼拝なり。其の故は塔婆とは五大の所成なり。五大とは地水火風空なり。此を多宝の塔共云ふなり。法界広しと雖も此の五大には過ぎざるなり。故に塔中の礼拝と相伝するなり。秘すべし秘すべし。
    第十八 開示悟入礼拝住処の事
  御義口伝に云はく、開示悟入の四仏知見を住処とするなり。然る間方便品の此の文を礼拝の住処と云ふなり。此は「内に不軽の解を懐く」と釈せり。解とは正因仏性を具足すと釈するなり。開仏知見とは此の仏性を開かしめんとて仏は出現し玉ふなり。
    第十九 毎自作是念の文礼拝住処の事
 

平成新編御書 ―1780㌻―

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