←次へ  TOPへ↑  前へ→  

『戒体即身成仏義』


(★12㌻)
 
 №0012 戒法門
 
  夫人は天地の精、五行の端なり。故に悟りあて直きを人と云ふ。心に因果の道理を弁へて人間には生まれける由を知るべし。一代聖教のおきてには、戒を持ちて人間には生まるとおきてたり。
  戒と申すは一切の経論に説かるゝ数は、五戒・八戒・十戒・十重禁戒・四十八軽戒・二百五十戒・五百戒・乃至八万四千戒。此くの如く戒品多しといへども、始めの五戒を戒の本と申し候ぞ。五戒と申すは、一には慈悲を起こして物の命を殺さゞる戒を不殺生戒と名づく。道理なき殺生を制するなり。一を殺して万を生かすべきをば許すべし。二には盗みせざる戒を不偸盗戒と名づく。道理なき盗みの事なり。三には他人の妻を犯さゞる戒を不邪婬戒と名づく。四には妄語せざる戒を不妄語戒と名づく。由なき事に妄語せざれとなり。五には酒を飲まざる戒、僻事を制するなり。薬酒をば飲むべし。先世に三宝の御前にして此の戒を受けし時、天には日月・衆星・二十八宿・七星・九曜・五星、地には五つの地神・七鬼神・十二神・三十六禽、又梵天・帝釈・四大天王・五道の冥官等、此の五戒を受くる人を護らんと誓ひ給ひき。
  又五戒に依って生ずべき処を定む。不妄語戒は大地をつくる。不殺生戒は草木となる。不邪婬戒は大海・江河となる。不盗戒は風となる。不飲酒戒は火となりて草木の中にあり。又五戒は五山となる。南には火の山、北に
 

平成新編御書 ―12㌻―

provided by