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『三種教相事』


(★62㌻)
  玄の一 十九 に云はく「又異をいはゞ余教は当機に物を益して如来施化の意を説かず。此の経は仏教を設けたまふ元始、巧みに衆生の為に頓漸不定顕密の種子を作し、中間に頓漸五味を以て調伏長養して之を成熟し、又頓漸五味を以て之を度脱することを明かす。並びに脱し並びに熟し並びに種すること番々息まず。大勢威猛三世に物を益す。具に信解品の中に説くが如し。余経と異なるなり」と。籤 一末九紙 に云はく「次に此の経の下は正しく今経の意を明かす。且く迹中の大通を指して首めと為す。漸及び不定に寄すと雖も余経を以て種と為さず。故に巧為と云ふ。結縁已後退大して初めに迷ふ。故に復更に七教の中に於て調停の種を下すを復巧為と云ふ。所以に中間に七教を受くることを得て長養調伏す」と。又云はく「又以の下は今世に復七教を以て調伏し、法華に至って得度せしむることを明かす。故に度脱と云ふなり。並脱等とは多人に約して説く。彼に於ては是種、此に於ては是熟、互ひに説くこと知んぬべし。是の故に並及番々不息と云ふ。此即ち初め及以中間今日等の相を結す。故に更に涌出を引いて迹の文を助顕す。故に大勢威猛等と云ふなり」と。又 十紙 云はく「次に信解を指すとは、即ち信解の中に又以他日於窓牖中と云ふ。即ち法身地にして機を鑑みること久しきを指す。故に此の一語即ち三世益物の相を兼ぬ」文。籤の一 本四十四 に云はく「垂迹より已来化を受くる者漸く広し。久近の益を得ることは功法華に在り」と。止の三 終に云はく「若し初業に常を知ることを作さずんば三蔵の帰戒羯磨悉く成就せず。若し此の釈を作すときは大小両経に於て義相違なし」と。又 八十三 云はく「遠く根本を尋ぬれば三乗の初業法に愚かならず。若し四念処の聞慧を取って初めと為さば此の初めより真諦の常住を知る」文。弘の三 下七十二 に云はく「初文は且く久遠の初業を標す。故に根本と云ふ。十六王子に結縁せざること莫し。且く迹の化を指す。故に遠尋と曰ふ。若取の下は近く此の生に初めて四諦滅理の真常を聞くことを指す」と。又云はく「今日の声聞の禁戒を具する者は良に久遠の初業に
 

平成新編御書 ―62㌻―

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