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『十法界明因果抄』


(★210㌻)
  法華経に云はく「若し人信ぜずして此の経を毀謗せば○若し人と為ることを得ては諸根闇鈍にして盲・聾・背傴ならん○口の気常に臭く、鬼魅に著せられん。貧窮下賤にして人に使はれ、多病瘠痩にして依怙する所無く○若しは他の叛逆し抄却し竊盗せん。是くの如き等の罪横に其の殃に羅らん」文。又八の巻に云はく「若し復是の経典を受持する者を見て其の過悪を出ださん。若しは実にもあれ若しは不実にもあれ、此の人は現世に白癩の病を得ん。若し之を軽笑すること有らん者は当に世々に牙歯疎き欠け・醜き脣平める鼻・手脚繚戻し、眼目角睞に、身体臭穢・悪瘡・膿血・水腹・短気諸の悪重病あるべし」文。
  問うて云はく、何なる業を修する者が六道に生じて其の中の王と成るや。答へて云はく、大乗の菩薩戒を持して之を破る者は色界の梵王・欲界の魔王・帝釈・四輪王・禽獣王・閻魔王等と成るなり。心地観経に云はく「諸王の受くる所の諸の福楽は、住昔曽て三つの浄戒を持ち、戒徳薫修して招き感ずる所にして、人天の妙果として王の身を獲たり。○中品に菩薩界を受持すれば、福徳自在の転輪王となり、心の所作に随ひて尽く皆成じ、無量の人天悉く遵奉せん。下の上品に持すれば大鬼王となり、一切の非人咸く率伏せん。戒品を受持して欠犯すと雖も、戒の勝るゝに由るが故に王と為ることを得るなり。下の中品に持すれば禽獣の王となり、一切の飛走皆帰伏せん。清浄の戒に於て欠犯有るも戒の勝るゝに由るが故に王と為ることを得るなり。下の下品に持すれば、琰魔王として地獄の中に処して常に自在なり、禁戒を毀り悪道に生ずと雖も、戒の勝るゝに由るが故に王と為ることを得るなり○若し如来の戒を受けざること有らば、終に野干の身をも得ること能はず。何に況んや、能く人天の中の最勝の快楽を感じて、王位に居せんをや」文。安然和尚の広釈に云はく「菩薩の大戒は持して法王と成り、犯して世王となる。而も戒の失せざること譬へば金銀を器と為すに用ふるに貴く、器を破りて用ひざるも而も宝は失せざるが如し」と。亦云はく「無量寿観に云はく、劫初より已来八万の王有りて其の父を殺害すと。此則ち菩薩戒を受け国王と作ると雖も、
 
 

平成新編御書 ―210㌻―

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