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『四条金吾殿御書』


(★469㌻)
 
 №0094
     四条金吾殿御書   文永八年七月一二日  五〇歳
 
  雪のごとく白く候白米一斗、古酒のごとく候油一筒、御布施一貫文、態と使者を以て盆料送り給び候。殊に御文の趣有り難くあはれに覚え候。
  抑盂蘭盆と申すは、源目連尊者の母青提女と申す人、慳貪の業によりて五百生餓鬼道にをち給ひて候を、目連救ひしより事起こりて候。然りと雖も仏にはなさず。其の故は我が身いまだ法華経の行者ならざる故に母をも仏になす事なし。霊山八箇年の座席にして法華経を持ち、南無妙法蓮華経と唱へて多摩羅跋栴檀香仏となり給ひ、此の時母も仏になり給ふ。
  又施餓鬼の事仰せ候。法華経の第三に云はく「飢ゑたる国より来たって、忽ちに大王の膳に遇うが如し」云云。此の文は中根の四大声聞、醍醐の珍膳をおとにもきかざりしが、今経に来たって始めて醍醐の味をあくまでになめて、昔のうゑたる心を忽ちにやめし事を説き給ふ文なり。若し爾らば餓鬼供養の時は此の文を誦して、南無妙法蓮華経と唱へてとぶらひ給ふべく候。 
  総じて餓鬼にをいて三十六種相わかれて候。其の中に鑊身餓鬼と申すは目と口となき餓鬼にて候。是は何なる修因ぞと申すに、此の世にて夜討ち・強盗などをなして候によりて候。食吐餓鬼と申すは人の口よりはき出す物を食し候。是も修因上の如し。又人の食をうばふに依り候。食水餓鬼と云ふは父母孝養のために手向くる水などを呑む餓鬼なり。有財餓鬼と申すは馬のひづめの水をのむがきなり。是は今生にて財ををしみ、食をかくす故なり。無財がきと申すは生まれてより以来飲食の名をもきかざるがきなり。
 

平成新編御書 ―469㌻―

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