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『生死一大事血脈抄』
(★514㌻)
夕顔の手を出だすが如くと思し食せ。過去に法華経の結縁強盛なる故に現在に此の経を受持す、未来に仏果を成就せん事疑ひ有るべからず。過去の生死・現在の生死・未来の生死、三世の生死に法華経を離れ切れざるを法華の血脈相承とは云ふなり。謗法不信の者は「即断一切世間仏種」とて、仏に成るべき種子を断絶するが故に、生死一大事の血脈之無きなり。
総じて日蓮が弟子檀那等自他彼此の心なく、水魚の思ひを成して異体同心にして南無妙法蓮華経と唱へ奉る処を、生死一大事の血脈とは云ふなり、然も今日蓮が弘通する処の所詮是なり。若し然らば広宣流布の大願も叶ふべき者か。剰へ日蓮が弟子の中に異体異心の者之有れば、例せば城者として城を破るが如し。日本国の一切衆生に法華経を信ぜしめて仏に成る血脈を継がしめんとするに、還って日蓮を種々の難に合はせ、結句此の島まで流罪す。而るに貴辺日蓮に随順し又難に値ひ給ふ事、心中思ひ遣られて痛ましく候ぞ。金は大火にも焼けず大水にも漂はず朽ちず、鉄は水火共に堪へず。賢人は金の如く愚人は鉄の如し、貴辺豈真金に非ずや。法華経の金を持つ故か。経に云はく「衆山の中に須弥山これ第一、此の法華経も亦復是くの如し」と。又云はく「火も焼くこと能はず水も漂はすこと能はず」云云。過去の宿縁追ひ来たって今度日蓮が弟子と成り給ふか。釈迦多宝こそ御存知候らめ。「在々諸仏土常与師倶生」よも虚事候はじ。
殊に生死一大事の血脈相承の御尋ね先代未聞の事なり貴し貴し。此の文に委悉なり、能く能く心得させ給へ。只南無妙法蓮華経釈迦多宝上行菩薩血脈相承と修行し給へ。火は焼き照らすを以て行と為し、水は垢穢を浄むるを以て行と為し、風は塵埃を払ふを以て行と為し、又人畜草木の為に魂となるを以て行と為し、大地は草木を生ずるを以て行と為し、天は潤すを以て行と為す。妙法蓮華経の五字も又是くの如し、本化地涌の利益是なり。上行菩薩末法今の時此の法門を弘めんが為に御出現之有るべき由、経文には見え候へども如何が候やらん、
平成新編御書 ―514㌻―
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