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『草木成仏口決』


(★522㌻)後
 №0113
     草木成仏口決  文永九年二月二〇日  五一歳
 
  問うて云はく、草木成仏とは有情非情の中何れぞや。答へて云はく、草木成仏とは非情の成仏なり。問うて云はく、情・非情共に今経に於て成仏するや。答へて云はく、爾なり。問うて云はく、証文如何。答へて云はく、妙法蓮華経是なり。妙法とは有情の成仏なり、蓮華とは非情の成仏なり。有情は生の成仏、非情は死の成仏、生死の成仏と云ふが有情・非情の成仏の事なり。其の故は、我等衆生死する時塔婆を立て開眼供養するは、死の成仏にして草木成仏なり。止観の一に云はく「一色一香中道に非ざること無し」と。妙楽云はく「然も亦共に色香中道を許す。無情仏性惑耳驚心す」と。此の一色とは、五色の中には何れの色ぞや、青・黄・赤・白・黒の五色を一色と釈せり。一とは法性なり、爰を以て妙楽は色香中道と釈せり。天台大師も無非中道といへり。一色一香の一は、二三相対の一には非ざるなり。中道法性をさして一と云ふなり。所詮十界・三千・依正等をそなへずと云ふ事なし。此の色香は草木成仏なり。是即ち蓮華の成仏なり。色香と蓮華とは、言はかはれども草木成仏の事なり。口決に云はく「草にも木にも成る仏なり」云云。此の意は、草木にも成り給へる寿量品の釈尊なり。経に云はく「如来秘密神通之力」云云。法界は釈迦如来の御身に非ずと云ふ事なし。理の顕本は死を表はす、妙法と顕はる。事の顕本は生を表はす、蓮華と顕はる。理の顕本は死にて有情をつかさどる。事の顕本は生にして非情をつかさどる。
 

平成新編御書 ―522㌻―

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