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『草木成仏口決』


(★523㌻)前
 我等衆生のために依怙・依託なるは非情の蓮華がなりたるなり。我等衆生の言語・音声、生の位には、妙法が有情となりぬるなり。我等一身の上には有情非情具足せり。爪と髮とは非情なり、きるにもいたまず、其の外は有情なれば切るにもいたみ、くるしむなり。一身所具の有情非情なり。此の有情非情、十如是の因果の二法を具足せり。衆生世間・五陰世間・国土世間、此の三世間有情非情なり。一念三千の法門をふりすすぎたるは大曼荼羅なり。当世の習ひそこなひの学者ゆめにもしらざる法門なり。天台・妙楽・伝教、内にはかがみさせ給へどもひろめ給はず。一色一香とのゝしり惑耳驚心とさゝやき給ひて、妙法蓮華経と云ふべきを円頓止観とかへさせ給ひき。されば草木成仏は死人の成仏なり。此等の法門は知る人すくなきなり。所詮妙法蓮華をしらざる故に迷ふところの法門なり。敢へて忘失する事なかれ。恐ゝ謹言。
  二月廿日                    日蓮花押
 最蓮房御返事
 

平成新編御書 ―523㌻―

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