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『日妙聖人御書』


(★607㌻)前
 日本第一の法華経の行者の女人なり。故に名を一つつけたてまつりて不軽菩薩の義になぞらえん。日妙聖人等云云。
  相州鎌倉より北国佐渡国、其の中間一千余里に及べり。山海はるかにへだて、山は峨々海は濤々、風雨時にしたがふ事なし。山賊海賊充満せり。すくすくとまりとまり民の心虎のごとし犬のごとし。現身に三悪道の苦をふるか。其の上当世の乱世、去年より謀叛の者国に充満し、今年二月十一日合戦、其れより今五月のすゑ、いまだ世間安穏ならず。而れども一の幼子あり。あずくべき父もたのもしからず。離別すでに久し。かたがた筆も及ばず、心弁へがたければとゞめ了んぬ。
  文永九年太歳壬申五月二十五日              日蓮花押
 日妙聖人
 

平成新編御書 ―607㌻―

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