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『観心本尊抄』


(★655㌻)
 涅槃経等は流通分なり。
  正宗十巻の中に於て亦序正流通有り。無量義経並びに序品は序分なり、方便品より分別功徳品の十九行の偈に至るまでの十五品半は正宗分なり、分別功徳品の現在の四信より普賢経に至るまでの十一品半と一巻は流通分なり。
  又法華経等の十巻に於ても二経有り。各序正流通を具するなり。無量義経と序品は序分なり、方便品より人記品に至るまでの八品は正宗分なり、法師品より安楽行品に至るまでの五品は流通分なり。其の教主を論ずれば始成正覚の仏、本無今有の百界千如を説いて已今当に超過せる随自意・難信難解の正法なり。過去の結縁を尋ぬれば大通十六の時仏果の下種を下し、進んでは華厳経等の前四味を以て助縁と為して大通の種子を覚知せしむ。此は仏の本意に非ず、但毒発等の一分なり。二乗・凡夫等は前四味を縁として、漸々に法華に来至して種子を顕はし、開顕を遂ぐるの機是なり。又在世に於て始めて八品を聞く人天等、或は一句一偈等を聞いて下種と為し、或は熟し或は脱し、或は普賢・涅槃等に至り、或は正像末等に小権等を以て縁と為して法華に入る。例せば在世の前四味の者の如し。
  又本門十四品の一経に序正流通有り。涌出品の半品を序分と為し、寿量品と前後の二半と此を正宗と為す、其の余は流通分なり。其の教主を論ずれば始成正覚の釈尊には非ず。所説の法門も亦天地の如し。十界久遠の上に国土世間既に顕はれ一念三千殆ど竹膜隔又迹門並びに前四味・無量義経・涅槃経等の三説は悉く随他意・易信易解、本門は三説の外の難信難解・随自意なり。
  又本門に於ても序正流通有り。過去大通仏の法華経より乃至現在の華厳経、乃至迹門十四品・涅槃経等の一代五十余年の諸経・十方三世諸仏の微塵の経々は皆寿量の序分なり。一品二半よりの外は小乗教・邪教・未得道教・
 

平成新編御書 ―655㌻―

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