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『大学三郎殿御書』


(★884㌻)後
 №0205
     大学三郎殿御書   建治元年七月二日  五四歳
 
  外道には天・人・畜の三善道を明かし、鬼道の有無之を論じて、地獄道は其の沙汰無し。小乗経には六道の因果を明かして、四聖は以て分明ならず。倶舎・成実・律の三宗は小乗経に依憑して但六道を明かす是なり。三論宗は天台宗已前に天竺より之を渡す。八界を立てゝ十界を明かさず。法相宗は又天竺の宗なり。天台已後に唐の太宗の世に之を渡す、又八界を立つ。大乗たりと雖も五性各別を立て、無性有情は永く成仏せずと之を立つ。殆ど外道の法に似たり。自他宗の歎きなり。華厳宗・真言宗の両宗は天台已後に之有り。華厳宗は唐の則天皇后の御宇に之を立つ。真言宗は玄宗の時善無畏三蔵之を渡す。但し天竺に真言宗の名之無し。無畏三蔵大日経を以て宗と為すがの故に猥りに天竺の宗と称するか。此の二宗は共に十界を立つ。但し天台宗已後なり。智者大師の巧智を偸盗して自身の才財と号するか。
  仏説の如く之を勘ふれば、法華経の外の華厳経・大集経・般若経・大日経・深密経等の諸経は但小衍相対なり。但法華経計りに限って已今当を以て眷属の修多羅と為す。然りと雖も天台已前の諸師は法華経等の一切の大乗経を小衍相対を以て之を釈す。王臣の差別無く上下之を混ず。仏法未だ顕はれず、愚癡の失之有り。天台已後に諸宗小衍相対の経々を以て権実相対之を定む。天台の智之を盗めり。日月に背いて灯(火+主)に向かひ、丘塚を華恒に比する是なり。仏は十八界、修羅は十九界、天台は四智、真言は五智、天台は九識十識、真言は十識十一識なり。
 

平成新編御書 ―884㌻―

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