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『秀句十勝抄』


(★1334㌻)
 他宗所依の経は諸経の王等一両句の文有れども当分の王たるが故に転輪王と名づけず。已顕真実の日に説く所の法華は此転輪王の如し。天台法華宗は衆経の中に於て最も其の尊たり。是の諸宗に勝るゝことは是臆説にあらず第五の喩へ竟はる。海・山・月・日・梵王は仏の全喩、輪王・帝釈・五仏子は菩薩の分喩なり。大なること海の如く、高きこと山の如く、円かなること月の如く、明らかなること日の如く、自在なること梵王の如く、極なること仏の如し。
  又云はく、第六の譬へ之を略す。
  「又大梵天王の一切衆生の父なるが如く、此の経も亦復是くの如し。一切の賢聖・学無学及び菩薩の心を発こせる者の父なり」已上経文。玄に云はく、略す。
  経と玄と開合して王が中の王なるを顕はさんが為なり○王中の王を法華に喩ふ○明らかに知んぬ、他宗所依の経は是王の中の王にあらず。天台法華宗のみ独り王が中の王たることを。大日経第七に云はく、我が大日経王の説に依る。金剛頂経に云はく、大教王経。蘇悉地経に云はく、三部の中に於て此の経を王と為す云云。日蓮が云はく、大日三部経は小王の中の王か、中王の内か、将亦王が中の王に勝るか。 当に知るべし、他宗所依の経は一分の仏母の義有りと雖も、然も但愛のみ有りて厳の義を欠く。天台法華宗のみ厳愛の義を具す。一切賢聖・学無学及び菩薩の心を発こせる者の父なり第七の喩へ竟はる。
  又第八「一切凡夫人の中に須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏為れ第一なるが如く、此の経も亦復是くの如し。一切如来の所説、若しは菩薩の所説、若しは声聞の所説、諸の経法の中に最も為れ第一なり。能く是の経典を受持すること有らん者も亦復是くの如し。一切衆生の中に於て亦為れ第一なり」已上経文。玄は略す。 当に知るべし、他宗所依の経は未だ最も為れ第一ならず。其の能く経を持つ者も亦未だ第一ならず。天台法華宗所持の法華は最も為れ第一なり。故に能く法華を持つ者も亦衆生の中に第一なり。已に仏説に拠る、豈自歎ならんや第八の譬へ竟はる。
    日蓮疑って云はく、真言宗の畏・智・空・法・覚・証と伝教大師末学の法華の行者の四衆と勝劣如何。
  又第九云はく「一切の声聞・辟支仏の中に菩薩為れ第一なり。此の経も亦復是くの如し。
 

平成新編御書 ―1334㌻―

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