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『上野殿御返事』
(★1361㌻)
日蓮仏果をえむに争でかせうばうが恩をすつべきや。何に況んや法華経の御恩の杖をや。かくの如く思ひつづけ候へば感涙をさへがたし。
又涌出品は日蓮がためにはすこしよしみある品なり。其の故は上行菩薩等の末法に出現して、南無妙法蓮華経の五字を弘むべしと見へたり。しかるに先づ日蓮一人出来す。六万恒沙の菩薩よりさだめて忠賞をかほるべしと思へばたのもしき事なり。とにかくに法華経に身をまかせ信ぜさせ給へ。殿一人にかぎるべからず。信心をすすめ給ひて、過去の父母等をすくわせ給へ。日蓮生まれし時よりいまに一日片時もこころやすき事はなし。此の法華経の題目を弘めんと思ふばかりなり。
相かまへて相かまへて、自他の生死はしらねども、御臨終のきざみ、生死の中間に、日蓮かならずむかいにまいり候べし。三世の諸仏の成道は、ねうしのをはりとらのきざみの成道なり。仏法の住処は鬼門の方に三国ともにたつなり。此等は相承の法門なるべし。委しくは又々申すべく候。恐々謹言。
かつへて食をねがひ、渇して水をしたうがごとく、恋て人を見たきがごとく、病にくすりをたのむがごとく、みめかたちよき人、べにしろいものをつくるがごとく、法華経には信心をいたさせ給へ。さなくしては後悔あるべし云云
卯月二十日 日蓮花押
上野殿御返事
平成新編御書 ―1361㌻―
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