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『新池殿御消息』


(★1363㌻)
 №0364
     新池殿御消息    弘安二年五月二日  五十八歳
 
  八木三石送り給び候。今一乗妙法蓮華経の御宝前に備へ奉りて、南無妙法蓮華経と只一遍唱へまいらせ候ひ畢んぬ。いとをしみの御子を、霊山浄土へ決定無有疑と送りまいらせんがためなり。
  抑因果のことはりは華と果との如し。千里の野の枯れたる草に、蛍火の如くなる火を一つ付けぬれば、須臾に一草二草十百千万草につき、わたりてもゆれば十町二十町の草木一時にやけつきぬ。竜は一渧の水を手に入れて天に昇りぬれば三千世界に雨をふらし候。小善なれども法華経に供養しまいらせ給ひぬれば功徳此くの如し。
  仏滅後一百年と申せしに月氏国に阿育大王と申せし王ましましき。一閻浮提八万四千の国を四分が一御知行ありき。竜王をしたがへ、鬼神を召し仕はせ給ふ。六万の羅漢を師として八万四千の石塔を立て、十万億の金を仏に供養し奉らんと誓はせ給ひき。かゝる大王にてをはせし其の因位の功徳をたづぬれば、たゞ土の餅一つ釈迦仏に供養し奉りし故ぞかし。釈迦仏の伯父に斛飯王と申す王をはします。彼の王に太子あり、阿那律となづく。此の太子生まれ給ひしに御器一つ持ち出でたり。彼の御器に飯あり。食すれば又出でき、又出でき、終に飯つくる事なし。故にかの太子のをさな名をば如意となづけたり。法華経にて仏に成り給ふ普明如来是なり。此の太子の因位を尋ぬれば、うへたる世にひえの飯を辟支仏と申す僧に供養せし故ぞかし。辟支仏を供養する功徳すら此くの如し。況んや法華経の行者を供養せん功徳は、無量無辺の仏を供養し進らする功徳にも勝れて候なり。
  抑日蓮は日本国の者なり。此の国は南閻浮提七千由旬の内に八万四千の国あり。其の中に月氏国と申す国は大国なり。彼の国に五天竺あり。十六の大国・五百の中国・十千の小国・無量の粟散国あり。
 

平成新編御書 ―1363㌻―

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