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『出家功徳御書』


(★1371㌻)後
 №0368
     出家功徳御書    弘安二年五月  五八歳
 
  近日誰やらん承りて申し候は、内々還俗の心中出来候由風聞候ひけるは実事にてや候らん、虚事にてや候らん。心元なく候間一筆啓せしめ候。
  凡そ父母の家を出でて僧となる事は、必ず父母を助くる道にて候なり。出家功徳経に云はく「高さ三十三天に百千の塔婆を立つるよりも、一日の出家の功徳は勝れたり」と。されば其の身は無智無行にもあれ、かみをそり、袈裟をかくる形には天魔も恐れをなすと見えたり。大集経に云はく「頭を剃り袈裟を著くれば持戒及び毀戒も天人供養すべし。則ち仏を供養するに為りぬ」云云。又一経の文に、有る人海辺をとをる、一人の餓鬼あって喜び踊れり。其の謂はれを尋ぬれば、我が七世の孫今日出家になれり。其の功徳にひかれて出離生死せん事喜ばしきなりと答へたり。されば出家と成る事は我が身助かるのみならず、親をも助け、上無量の父母まで助かる功徳あり。されば人身をうくること難く、人身をうけても出家と成ること尤も難し。
  然るに悪縁にあふて還俗の念起こる事浅ましき次第なり。金を捨てゝ石をとり、薬を捨てゝ毒をとるが如し。我が身悪道に堕つるのみならず、六親眷属をも悪道に引かん事不便の至極なり。
 

平成新編御書 ―1371㌻―

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