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『出家功徳御書』


(★1372㌻)
 其の上在家の世を渡る辛労一方ならず、やがて必ず後悔あるべし。只親のなされたる如く、道をちがへず出家にてあるべし。道を違へずば十羅刹女の御守り堅かるべし。道をちがへたる者をば、神も捨てさせ給へる理にて候なり。大勢至経に云はく「衆生に五つの失有り、必ず悪道に堕ちん。一つには出家還俗の失なり」と。又云はく「出家の還俗は其の失五逆に過ぎたり」文。五逆罪と申すは父を殺し、母を殺し、仏を打ち奉りなんどする大いなる失を五つ聚めて五逆罪と云ふなり。されば此の五逆罪の人は、一中劫の間無間地獄に堕ちて浮かぶ事なしと見えたり。然るに今宿善薫発して出家せる人の、還俗の心付きて落つるならば、彼の五逆罪の人よりも、罪深くして大地獄に堕つべしと申す経文なり。能く能く此の文を御覧じて思案あるべし。
  我が身は天よりもふらず、地よりも出でず、父母の肉身を分けたる身なり。我が身を損ずるは父母の身を損ずるなり。此の道理を弁へて親の命に随ふを孝行と云ひ、親の命に背くを不孝と申すなり。所詮心は兎も角も起これ、身をば教への如く一期出家にてあらば、自ら冥加も有るべし。此の理に背きて還俗せば、仏天の御罰を蒙り、現世には浅ましくなりはて、後生には三悪道に堕ちぬべし。能く能く思案あるべし。身は無智無行にもあれ、形出家にてあらば、里にも喜び、某も祝著たるべし。況んや能き僧にて候はんをや。委細の趣、後音を期し候。
                             日蓮花押    
 

平成新編御書 ―1372㌻―

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