←次へ  TOPへ↑  前へ→  

『中興入道御消息』


中興入道御消息
(★1430㌻)後

  №0392

      中興入道御消息    弘安二年一一月三〇日  五八歳

  

   鵞目一貫文送り給び候ひ了んぬ。妙法蓮華経の御宝前に申し上げ候ひ了んぬ。

   抑日本国と申す国は須弥山よりは南、一閻浮提の内縦広七千由旬なり。其の内に八万四千の国あり。所謂五天竺十六の大国、五百の中国、十千の小国、無量の粟散国、微塵の島々あり。此等の国々は皆大海の中にあり。たとへば池にこのはのちれるが如し。此の日本国は大海の中の小島なり。しほみてば見へず、ひればすこしみゆるかの程にて候ひしを、神のつき出ださせ給ひて後、人王のはじめ神武天皇と申せし大王をはしましき。それよりこのかた三十余代は仏と経と僧とはましまさず。たゞ人と神とばかりなり。仏法をはしまさねば地獄もしらず、浄土もねがはず。父母兄弟のわかれありしかども、いかんがなるらん。たゞ露のきゆるやうに、日月のかくれさせ給ふやうに、うちをもいてありけるか。然るに人王第三十代欽明天皇と申す大王の御宇に、此の国より戌亥の角に当たりて百済国と申す国あり。彼の国よりせいめい王と申せし王、金銅の釈迦仏と、此の仏の説かせ給へる一切経と申すふみと、此をよむ僧をわたしてありしかば、

  

  

  

平成新編御書 ―1430㌻―

provided by