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『法華証明抄』


(★1590㌻)後
 №0476
     法華証明抄    弘安五年二月二八日  六一歳
 
                      法華経の行者 日蓮花押    
  末代悪世に法華経を経のごとく信じまいらせ候者をば、法華経の御鏡にはいかんがうかべさせ給ふと拝見つかまつり候へば、過去に十万億の仏を供養せる人なりとたしかに釈迦仏の金口の御口より出でさせ給ひて候を、一仏なれば末代の凡夫はうたがいやせんずらんとて、此より東方に、はるかの国をすぎさせ給ひておはします宝浄世界の多宝仏、わざわざと行幸ならせ給ひて釈迦仏にをり向かひまいらせて、妙法華経皆是真実と証明せさせ給ひ候き。此の上はなにの不審か残るべき。なれどもなをなを末代の凡夫はをぼつかなしとをぼしめしや有りけん、十方の諸仏を召しあつめさせ給ひて、広長舌相と申して無量劫よりこのかた永くそらごとなきひろくながく大なる御舌を、須弥山のごとく虚空に立てならべ給ひし事は、をびたゞしかりし事なり。かう候へば、末代の凡夫の身として法華経の一字二字を信じまいらせ候へば、十方の仏の御舌を持つ物ぞかし。いかなる過去の宿習にてかゝる身とは生まるらむと悦びまいらせ候上、
 

平成新編御書 ―1590㌻―

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