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『就註法華経口伝』


(★1742㌻)
 二十八品は有差別なり、妙法の五字は無差別なり。一地とは迹門の大地なり、一雨とは本門の義天なり。一地とは従因至果、一雨とは従果向因なり。末法に至っては従果向因の一雨を弘通するなり。一雨とは題目に余行を交へざるなり。序品の時は雨大法雨と説き、此の品の時は一雨所潤と説けり。一雨所潤は序品の雨大法雨を重ねて仏説き玉ふなり。一地とは五字の中の経の一字なり、一雨とは五字の中の妙の一字なり。法蓮華の三字は三千万法、中にも草木なり。三乗・五乗・七方便・九法界なり云云。
    第四 破有法王出現世間の事
  御義口伝に云はく、有とは謗法の者なり、破とは折伏なり、法王とは法華経の行者なり、世間とは日本国なり。又云はく、破は空、有は仮、法王は中道なり。されば此の文をば釈迦如来の種子と伝ふるなり。総じて三世の諸仏の出世は此の文に依るなり。有とは三界二十五有なり、破とは有執を破するなり、法王とは十界の衆生の心法なり、王とは心法を云ふなり、諸法実相と開くを破有法王とは云ふなり。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉るは、謗法の有執を断じて釈迦法王と成ると云ふ事なり。破有の二字を以て釈迦如来の種子とは云ふなり。又云はく、有と云ふは我等が煩悩生死なり。此の煩悩生死を捨てゝ、別に菩提涅槃有りと云ふは権教権門の心なり。今経の心は煩悩生死を其の儘置いて菩提涅槃と開く処を破と云ふなり。有とは煩悩、破とは南無妙法蓮華経なり。有は所破なり、破は能破なり。能破所破共に実相の一理なり。序品の時は尽諸有結と説き、此の品には破有法王と説き、譬喩品の時は皆是我有と宣べたり云云。
    第五 我観一切普皆平等無有彼此愛憎之心我無貪著亦無限碍の事
  御義口伝に云はく、此の五句の文は五識なり。我観一切 普皆平等とは九識なり、無有彼此とは八識なり、愛憎之心とは七識なり、我無貪著とは六識なり、亦無限礙とは五識なり。我等衆生の観法の大体なり。
 

平成新編御書 ―1742㌻―

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