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『就註法華経口伝』


(★1741㌻)
    薬草喩品五箇の大事
    第一 薬草喩品の事  記の七に云はく「無始の性徳は地の如く、大乗の心を発こすは種の如し。二乗の心を発こすは草木の芽茎の如し。今初住に入るは同じく仏乗の芽茎等を成ずるが如し」と。
  御義口伝に云はく、法華の心を信ずるは種なり。諸法実相の内証に入れば仏果を成ずるなり。薬とは九界の衆生の心法なり。其の故は権教の心は毒草なり。法華に値ひぬれば三毒の煩悩の心地を三身果満の種なりと開覚するを薬とは云ふなり。今日蓮等の類妙法の薬を煩悩の草に受くるなり。煩悩即菩提・生死即涅槃と覚らしむるを喩と云ふなり。釈に云はく「喩とは暁訓なり」と。薬草喩とは我等行者の事なり。
    第二 此の品述成段の事
  御義口伝に云はく、述とは迦葉なり、成とは釈尊なり。述成の二字は迦葉釈尊一致する義なり。所詮述は所化の領解、成は仏の印加なり。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と領するは述なり、日蓮が讃歎するは成なり。我等が即身成仏を説き極めたる品なり。述成一致符契するは述成不二の即身成仏なり。此の述成は法界三千の皆成仏道の述成なり。
    第三 雖一地所生一雨所潤等の事
  御義口伝に云はく、随縁不変の起こる所の文なり。妙楽大師云はく「随縁不変の説は大教より出で、木石無心の語は小宗より生ぜり」と。此の大教とは一経の総体に非ず、此の「雖一地所生、一雨所潤、而諸草木、各有差別」の十七字を指すなり。一地所生 一雨所潤は無差別譬、而諸草木 各有差別は有差別譬なり。無差別譬の故に妙なり、有差別譬の故に法なり云云。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉るは有差を置くなり。
 

平成新編御書 ―1741㌻―

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