←次へ  TOPへ↑  前へ→  

『就註法華経口伝』


(★1757㌻)
    提婆品八箇の大事
    第一 提婆達多の事  文句の八に云はく「本地は清涼にして迹に天熱を示す」と。
  御義口伝に云はく、提婆とは本地は文殊なり、本地清涼と云ふなり。迹には提婆と云ふなり。迹に天熱を示す是なり。清涼は水なり、此は生死即涅槃なり。天熱は火なり、是は煩悩即菩提なり。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉るは煩悩即菩提・生死即涅槃なり。提婆は妙法蓮華経の別名なり。過去の時に阿私仙人なり。阿私仙人とは妙法の異名なり、阿とは無の義なり、無私の法とは妙法なり。文句の八に云はく「無私の法を以て衆生に灑ぐ」と云へり。阿私仙人とは法界三千の別名なり。故に私無きなり。一念三千之を思ふべし云云。
    第二 若不違我当為宣説の事
  御義口伝に云はく、妙法蓮華経を宣説する事、汝は我に違はずして宣説すべしと云ふ事なり。若の字は汝なり。天台の云はく「法を受けて奉行す」と。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉る者は、日蓮に違はず宣説すべきなり。阿私仙人とは南無妙法蓮華経なり云云。
    第三 採菓汲水拾薪設食の事
  御義口伝に云はく、採菓とは癡煩悩なり、汲水とは貪煩悩なり、拾薪とは瞋煩悩なり、設食とは慢煩悩なり。此の下に八種の給仕之有り。此の外に妙法蓮華経の伝受之無きなり。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉るは即ち千歳給仕なり。是即ち一念三千なり。貪瞋癡慢を対治するなり。
    第四 情存妙法故身心無懈倦の事
  御義口伝に云はく、身心の二字色心妙法と伝受するなり。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉りて即身成仏す。
 

平成新編御書 ―1757㌻―

provided by