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『就註法華経口伝』


(★1791㌻)
    第三 鬼子母神の事
  御義口伝に云はく、鬼とは父なり、子とは十羅刹女なり、母とは伽利帝母なり。逆次(ぎゃくじ)に次第する時、神とは九識なり、母とは八識へ出づる無明なり、子とは七識六識なり、鬼とは五識なり。流転門の時は悪鬼なり。還滅門の時は善鬼なり。仍って十界互具百界千如の一念三千を鬼子母神十羅刹女と云ふなり。三宝荒神とは十羅刹女の事なり。所謂飢渇神・貪欲神・障碍神なり。今法華経の行者は三毒即三徳と転ずる故に三宝荒神に非ざるなり。荒神とは法華不信の人なり。法華の行者の前にては守護神なり云云。
    第四 受持法華名者福不可量の事
  御義口伝に云はく、法華名とは題目なり。者とは日本国の一切衆生の中には法華の行者なり。又云はく、者の一字は男女の中には別して女人を讃めたり。女人を指して者とは云ふなり。十羅刹女は別して女人を本とせり。例せば竜女が度脱苦衆生とて女人を苦の衆生と云ふが如し。薬王品の是経典者の者と同じ事なり云云。
    第五 皐諦女の事
  御義口伝に云はく、皐諦女は本地は文殊菩薩なり。山海までも法華経の行者を守護すべしと云ふ経文なり。九悪一善とて皐諦女をば一善と定めたり。十悪の煩悩の時は偸盗に皐諦女は当たれり。逆次に次第するなり云云。
    第六 五番神呪の事
  御義口伝に云はく、五番神呪とは我等が一身なり。妙とは十羅刹女なり、法とは持国天なり、蓮とは増長天なり、華とは広目天なり、経とは毘沙門天なり。此の妙法の五字は五番神呪なり。五番神呪は我等が一身なり。十羅刹女の呪は妙の一字を十九句に並べたり。経文には「寧ろ我が頭の上に上るとも」の文是なり。持国天は法の一字を九句に並べたり。経文には「四十二億」と云へり。四とは生老病死、十とは十界三千、二とは迷悟なり。
 

平成新編御書 ―1791㌻―

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