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『諸宗問答抄』
(★30㌻)後
№0006 諸宗問答抄 (建長七年 三四歳)
問うて云はく、法華宗の法門は天台・妙楽・伝教等の釈をば御用ひ候か如何。答へて云はく、最も此の御釈共を明鏡の助証として立て申す法門にて候。問うて云はく、何を明鏡として立てられ候ぞや。彼の御釈共には爾前権教を簡び捨てらる事候はず。随って或は「初後の仏慧、円頓の義斉し」とも、或は「此の妙、彼の妙、妙の義殊なること無し」とも釈せられ、華厳と法華との仏慧は同じ仏慧にて異なること無しと釈せられ候。通教・別教の仏慧も法華と同じと見えて候。何を以て偏に法華勝れたりとは仰せられ候や、意得ず候如何。答へて云はく、天台の御釈を引かれ候は定めて天台宗にて御坐候らん。然れば天台の御釈には、教道・証道とて二筋を以て六十巻を作られ候。教道は即ち教相の法門にて候。証道は則ち内証の悟りの方にて候。只今引かれ候釈の文共は教・証の二道の中には何れの文と御意得候ひて引かれ候ぞや。若し教門の釈にて候は、教相には三種の教相を立て候。爾前・法華を釈して勝劣を判ぜられたり。先づ三種の教相には何ぞやと之を尋ぬべし。若し三種の教相と申すは一には根性の融不融の相、二には化導の始終不始終の相、三には師弟の遠近不遠近の相なりと答へば、さては只今引かる御釈は何れの教相の下にて引かれ候やと尋ぬべきなり。根性の融不融の下にて釈せらると答へば、
平成新編御書 ―30㌻―
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