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『一代聖教大意』


(★91㌻)
 秘蔵の大事の義には方等・般若は説時三十年。但し方等は前、般若は後と申すなり。仏は十九出家三十成道と定むる事は大論に見えたり。一代聖教五十年と申す事は涅槃経に見えたり。法華経已前四十二年と申す事は無量義経に見えたり。法華経八箇年と申す事は涅槃経の五十年の文と、無量義経の四十二年の文の間を勘ふれば八箇年なり。已上十九出家、三十成道、五十年の転法輪、八十入滅と定むべし。此等の四十二年の説教は皆法華経の汲引の方便なり。其の故は無量義経に云はく「我先に道場菩提樹下にして端坐すること六年、阿耨多羅三藐三菩提を成ずることを得たり○方便力を以て四十余年には末だ真実を顕はさず○初めに四諦を説き 阿含経なり ○次に方等十二部経・摩訶般若・華厳海空を説く」文。私に云はく、説の次第に順ずれば華厳・阿含・方等・般若・法華涅槃なり。法門の浅深の次第を列ねば阿含・方等・般若・華厳・法華涅槃と列ぬべし。されば法華経・涅槃経には爾の如く見えたり。華厳宗と申すは智儼法師・法蔵法師・澄観法師等の人師、華厳経に依って立てたり。倶舎宗・成実宗・律宗は宝法師・光法師・道宣等の人師、阿含経に依って立てたり。法相宗と申す宗は玄奘三蔵・慈恩法師等、方等部の内の上生経・下生経・成仏経・深密経・解深密経・瑜伽論・唯識論等の経論に依って立てたり。三論宗と申す宗は般若経・百論・中論・十二門論・大論等の経論に依って吉蔵大師立て給へり。華厳宗と申すは華厳と法華・涅槃は同じく円教と立つ。余は皆劣ると云ふなるべし。法相宗には深密・解深密経と華厳・般若・法華・涅槃は同じ程の経と云ふ。三論宗とは般若経と華厳・法華・涅槃は同じ程の経なり、但し法相の依経の諸の小乗経は劣なりと立つ。
  此等は皆法華已前の諸経に依って立てたる宗なり。爾前の円を極として立てたる宗どもなり。宗々の人々の諍ひは有れども経々に依って勝劣を判ぜん時はいかにも法華経は勝れたるべきなり。人師の釈を以て勝劣を論ずること無し。
 
 

平成新編御書 ―91㌻―

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