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『一念三千理事』


(★101㌻)
 
未来に正しく生を受けて母の腹に入る時を云ふなり。十二には老死、倶舎に云はく「当の受に至るまでは老死なり」文。生老死を受くるを老死憂悲苦悩とは云ふなり。
  問ふ、十二因縁を三世両重に分別する方如何。答ふ、無明と行とは過去の二因なり。識と名色と六入と触と受とは現在の五果なり。愛と取と有とは現在の三因なり。生と老死とは未来の両果なり。過去に二つ、現在に八つ、未来に二つなり。私の略頌に云はく「過去の二因 無明・行 現在の五果 識・名色・六入・触・受 現在の三因 愛・取・有 未来の両果 生・老死」と。問ふ、十二因縁流転の次第如何。答ふ、無明は行に縁たり。行は識に縁たり。識は名色に縁たり。名色は六入に縁たり。六入は触に縁たり。触は受に縁たり。受は愛に縁たり。愛は取に縁たり。取は有に縁たり。有は生に縁たり。生は老死憂悲苦悩に縁たり。是其の生死海に流転する方なり。此くの如くして凡夫とは成るなり。問ふ、還滅の十二因縁の様如何。答ふ、無明滅すれば則ち行滅す。行滅すれば則ち識滅す。識滅すれば則ち名色滅す。名色滅すれば則ち六入滅す。六入滅すれば則ち触滅す。触滅すれば則ち受滅す。受滅すれば則ち愛滅す。愛滅すれば則ち取滅す。取滅すれば則ち有滅す。有滅すれば則ち生滅す。生滅すれば則ち老死憂悲苦悩滅す。是其の還滅の様なり。仏は還って煩悩を失って行く方なり。私に云はく、中夭の人には十二因縁具に之無し。又天上にも具には之無く、又無色界にも具には之無し。
  一念三千理事
  十如是とは、如是相は身なり 玄二に云はく「相は以て外に拠る、覧て別つべし」文。籤六に云はく「相は唯色に在り」文。如是性は心なり 玄二に云はく「性は以て内に拠る、自分改めず」文。籤六に云はく「性は唯心に在り」文。如是体は身と心となり 玄二に云はく「主質を名づけて体と為す」文。如是力は身と心となり 止に云はく「力とは堪任を用と為す」文。如是作は身と心となり。 止に云はく「建立を作と名づく」文。如是因は心なり。 止に云はく「因とは果を招くを因と為す、亦名づけて業と為す」文。如是縁 止に云はく「縁とは縁は業を助くるに由る」文。如是果 止に云はく「果とは剋獲を果と為す」文。如是報 止に云はく「報とは因に酬ゆるを報と曰う」文。如是本末究竟等 玄二に云はく「初めの相を本と為し、後の報を末と為す」文。三種世間とは、五陰世間 止に云はく「十種陰果不同なるを以ての故に、故に五陰世間と名づくるなり」文。

 

平成新編御書 ―101㌻―

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