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『立正安国論』


(★237㌻)
 是くの如く変怪するを三の難と為すなり。大水百姓を(手+剽)没し、時節反逆して冬雨ふり、夏雪ふり、冬時に雷電霹(儮-人+石)し、六月に氷霜雹を雨らし、赤水・黒水・青水を雨らし、土山・石山を雨らし、沙・礫・石を雨らす。江河逆しまに流れ、山を浮べ石を流す。是くの如く変ずる時を四の難と為すなり。大風万姓を吹き殺し、国土山河樹木一時に滅没し、非時の大風・黒風・赤風・青風・天風・地風・火風・水風あらん、是くの如く変ずるを五の難と為すなり。天地国土亢陽し、炎火洞燃として百草亢旱し、五穀登らず、土地赫燃して万姓滅尽せん。是くの如く変ずる時を六の難と為すなり。四方の賊来たりて国を侵し、内外の賊起こり、火賊・水賊・風賊・鬼賊ありて百姓荒乱し、刀兵劫起せん。是くの如く怪する時を七の難と為すなり」と。
  大集経に云はく「若し国王有りて、無量世に於て施戒慧を修すとも、我が法の滅せんを見て捨てゝ擁護せずんば、是くの如く種うる所の無量の善根悉く皆滅失して、其の国当に三つの不祥の事有るべし。一には穀貴、二には兵革、三には疫病なり。一切の善神悉く之を捨離せば、其の王教令すとも人随従せず、常に隣国の為に侵・せられん。暴火横に起こり、悪風雨多く、暴水増長して、人民を吹(手+剽)せば、内外の親戚其れ共に謀叛せん。其の王久しからずして当に重病に遇ひ、寿終の後大地獄の中に生ずべし。乃至王の如く夫人・太子・大臣・城主・柱師・郡守・宰官も亦復是くの如くならん」已上。
  夫四経の文朗らかなり、万人誰か疑はん。而るに盲瞽の輩、迷惑の人、妄りに邪説を信じて正教を弁へず。故に天下世上諸仏衆経に於て、捨離の心を生じて擁護の志無し。仍って善神聖人国を捨て所を去る。是を以て悪鬼外道災を成し難を致すなり。
  客色を作して曰く、後漢の明帝は金人の夢を悟りて白馬の教を得、上宮太子は守屋の逆を誅して寺塔の構へを成す。爾しより来、上一人より下万民に至るまで仏像を崇め経巻を専らにす。然れば則ち叡山・南都・園城・東寺・
 

平成新編御書 ―237㌻―

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