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『立正安国論』


(★245㌻)
  又云はく「我往昔を念ふに、閻浮提に於て大国の王と作れり。名を仙予と曰ひき。大乗経典を愛念し敬重し、其の心純善にして麁悪嫉悋有有ること無し。善男子、我爾の時に於て心に大乗を重んず。婆羅門の方等を誹謗するを聞き、聞き已はって即時に其の命根を絶つ。善男子、是の因縁を以て是より已来地獄に堕せず」と。又云はく「如来昔国王と為りて菩薩道を行ぜし時、爾所の婆羅門の命を断絶す」と。又云はく「殺に三つ有り、謂はく下中上なり。下とは蟻子乃至一切の畜生なり。唯菩薩の示現生の者を除く。下殺の因縁を以て地獄・畜生・餓鬼に堕して具に下の苦を受く。何を以ての故に。是の諸の畜生に微かの善根有り、是の故に殺す者は具に罪報を受く。中殺とは凡夫の人より阿那含に至るまで是を名づけて中と為す。是の業因を以て地獄・畜生・餓鬼に堕して具に中の苦を受く。上殺とは父母乃至阿羅漢・辟支仏・畢定の菩薩なり。阿鼻大地獄の中に堕す。善男子、若し能く一闡提を殺すこと有らん者は則ち此の三種の殺の中に堕せず。善男子、彼の諸の婆羅門等は一切皆是一闡提なり」已上。
  仁王経に云はく「仏波斯匿王に告げたまはく、是の故に諸の国王に付嘱して比丘・比丘尼に付嘱せず。何を以ての故に。王のごとき威力無ければなり」已上。
  涅槃経に云はく「今無上の正法を以て諸王・大臣・宰相及び四部の衆に付嘱す。正法を毀る者をば大臣四部の衆、当に苦治すべし」と。又云はく「仏の言はく、迦葉能く正法を護持する因縁を以ての故に是の金剛身を成就することを得たり。善男子、正法を護持せん者は五戒を受けず、威儀を修せずして、応に刀剣・弓箭・無槊を持すべし」と。又云はく「若し五戒を受持せんの者有らば名づけて大乗の人と為すことを得ざるなり。五戒を受けざれども正法を護るを為て、乃ち大乗と名づく。正法を護る者は、当に刀剣器仗を執持すべし。刀杖を持つと雖も、我是等を説きて、名づけて持戒と曰はん」と。又云はく「善男子、過去の世に此の拘尸那城に於て仏の世に出でたまふこと有りき。
 

平成新編御書 ―245㌻―

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