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『顕謗法抄』


(★274㌻)
 
 №0039 顕謗法抄   (弘長二年  四一歳)
                       本朝沙門 日蓮撰
 
  第一に八大地獄の因果を明かし、第二に無間地獄の因果の軽重を明かし、第三に問答料簡を明かし、第四に行者の弘経の用心を明かす。
  第一に八大地獄の因果を明かさば、第一に等活地獄とは、此の閻浮提の地の下一千由旬にあり。此の地獄は縦広斉等にして一万由旬なり。此の中の罪人はたがいに害心をいだく。若したまたま相見れば犬と猿とのあえるがごとし。各鉄の爪をもて互ひにつかみさく。血肉既に尽きぬれば唯骨のみあり。或は獄卒手に鉄杖を取りて頭より足にいたるまで皆打ちくだく。身体くだけて沙のごとし。或は利刀をもて分々に肉をさく。然れども又よみがへりよみがへりするなり。此の地獄の寿命は、人間の昼夜五十年をもて第一四王天の一日一夜として、四王天の天人の寿命五百歳なり。四王天の五百歳を此の等活地獄の一日一夜として、其の寿命五百歳なり。此の地獄の業因をいはゞ、ものゝ命をたつもの此の地獄に堕つ。螻蟻蚊虻等の小虫を殺せる者も懺悔なければ必ず地獄に堕つべし。譬へばはりなれども水の上におけば沈まざることなきが如し。又懺悔すれども懺悔の後に重ねて此の罪を作れば後の懺悔には此の罪きえがたし。譬へばぬすみをして獄に入りぬるものゝ、しばらく経て後に御免を蒙りて獄を出ずれども、又重ねて盗みをして獄に入りぬれば出でてゆるされがたきが如し。されば当世の日本国の人は上一人より下万民に至るまで、此の地獄をまぬかるゝ人は一人もありがたかるべし。何に持戒のおぼへをとれる持律の僧たりとも、蟻虱なんどを殺さず、蚊虻をあやまたざるべきか。況んや其の外、山野の鳥鹿、
 

平成新編御書 ―274㌻―

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