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『顕謗法抄』


(★275㌻)
 江海の魚鱗を日々に殺すものをや。何に況んや牛馬人等を殺す者をや。
  第二に黒縄地獄とは、等活地獄の下にあり、縦広は等活地獄の如し。獄卒、罪人をとらえて熱鉄の地にふせて、熱鉄の縄をもて身にすみうて、熱鉄の斧をもて縄に随ってきりさきけずる。又鋸を以てひく。又左右に大なる鉄の山あり。山の上に鉄の幢を立て鉄の縄をはり、罪人に鉄の山ををゝせて縄の上よりわたす。縄より落ちてくだけ、或は鉄のかなえに堕とし入れてにらる。此の苦は上の等活地獄の苦よりも十倍なり。人間の一百歳は第二の・利天の一日一夜なり。其の寿一千歳なり。此の天の寿一千歳を一日一夜として、此の第二の地獄の寿命一千歳なり。殺生の上に偸盗とて、ぬすみをかさねたるもの此の地獄にをつ。当世の偸盗のもの、ものをぬすむ上、物の主を殺すもの此の地獄に堕つべし。
  第三に衆合地獄とは、黒縄地獄の下にあり。縦広は上の如し。多くの鉄の山二つづつ相向かへり。牛頭・馬頭等の獄卒、手に棒を取って罪人を駈って山の間に入らしむ。此の時両の山迫り来たりて合はせ押す。身体くだけて血流れて地にみつ。又種々の苦あり。人間の二百歳を第三の夜摩天の一日一夜として此の天の寿二千歳。此の天の寿を一日一夜として此の地獄の寿命二千歳なり。殺生・偸盗の罪の上、邪婬とて他人のつまを犯す者此の地獄の中に堕つべし。而るに当世の僧尼士女、多分は此の罪を犯す。殊に僧にこの罪多し。士女は各々互ひにまぼり又人目をつゝまざる故に此の罪を犯さず。僧は一人ある故に婬欲とぼしきところに、若し孕むこと有らば父たゞされてあらはれぬべきゆへに、独ある女人をばをかさず。もしやかくるゝと他人の妻をうかゞひ、ふかくかくれんとをもふなり。当世のほかたうとげなる僧の中に、ことに此の罪又多かるらんとおぼゆ。されば多分は当世たうとげなる僧此の地獄に堕つべし。
  第四に叫喚地獄とは、衆合の下にあり。縦広前に同じ。獄卒悪声出だして弓箭をもて罪人をいる。
 

平成新編御書 ―275㌻―

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