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『三八教』


(★413㌻)
 籤の一に云はく「初めに五味、次に不定、三に秘密、即ち八教なり。五味は即ち漸頓なるが故なり。漸の中に四を開し、不定等の二并せて即ち八と為すなり」と。籤の一に云はく「若し法を縁に被らしむるに約して漸円教と名づくるとは此の文の語は略なり。具足して応に云ふべし、鹿苑の漸の後に漸を会して円に帰す、故に漸円と云ふ」と人之を見ずして、便ち法華を漸円と為し、華厳を頓円為すと謂えり。華厳の部の中に別あるを、乃至般若の中の方便の二教は皆法華の一乗より開出するを知らず。故に「一仏乗に於て分別して三と説く」と云ふ。故に疏に云はく「一仏乗に於て帯二帯三を開出す」と、今法華の部は彼の二三なし。故に「二無く亦三無し」と云ふ。又上に結して「華厳は兼等此の経は復た兼但対帯なし」と云ふ。此見難きに非ず、如何ぞ固く迷へる。又今の文の諸義は凡そ一々の科、皆先づ四教に約して以て麁妙を判ず。則ち前の三を麁となし、後の一を妙と為す。次に五味に約して以て麁妙を判ず。則ち前の四味を麁と為し、醍醐を妙と為す。全く上下の文意を推求せずして、直ちに一語を指して便ち法華は華厳に劣ると謂へり。幾許ぞ誤るや幾許ぞ誤るや。又云はく「初の文は秘密に対せんが為なり。須く○此に準ずるに亦倶頓倶漸倶不定と云ふべし。文に無きは此亦略せり。既に倶黙倶説互ひに相知らず。之を名づけて密と為すと云ふ。何ぞ倶頓互ひに相知らざるを妨げん」と。又云はく「不定と秘密と倶に互知と互不知とありて以て両異を弁ず。此の中の顕露も亦義余の七に通ず。秘は此の七を出でざるを以ての故なり。故に前の文に、顕露の漸頓及び顕露の不定と云ふ。故に七并びに是顕露の意なり」と。又云はく「文に今法華は是顕露等と云ふは秘密に対非す故に顕露と云ふ。顕露の七が中に於て通じて奪って之を言へば并びに七に非ざるなり。別して与へて之を言へば但前の六に非ず。何となれば七が中に円教ありと雖も兼帯を以ての故に是の故に同じからず、此は部に約して説くなり。彼の七が中の円と法華の円と其の体別ならず。故に但六を簡ぶなり。此は教に約して説くなり。次に是漸頓にして漸々に非ずと云ふは具に前に判ずるが如し。今の法華経は是漸の後の頓なり。
 

平成新編御書 ―413㌻―

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