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『早勝問答』


(★498㌻)
 此の品に依って念仏を立つるか。私に云はく、彼が経文・釈義を引かん時は、先づ文段を一々問ふべし、大段万事の問ひには誹謗の言を先とすべし。前の当家の義云云。
  禅宗問答 
  問ふ、禅天魔の故、如何。答ふ、一義に云はく、仏経に依らざる故なり。一義に云はく、一代聖教を誹謗する故なり。
  問ふ、禅とは三世諸仏成道の始めは坐禅し給へり如何。答ふ、一義に云はく、汝が坐禅は仏の出世に背かば天魔治定なるか。又、坐禅は大小の中には何れぞや。一義に云はく、仏の端坐六年は法華に無益と云ふか。
  問ふ、禅法には仏説無益なり。答ふ、一義に云はく、是自義なるか、経文なるか。一義に云はく、やがて是が天魔の所為なり。
  問ふ、経文には「是の法示すべからず」と如何。答ふ、一義に云はく、此の文は法華無益と云ふ文なるか。一義に云はく、爾らば法華に依るか。一義に云はく、文段を以て責むべきなり。
  問ふ、竜女は坐禅の成仏なり、其の故は経文に「深く禅定に入って、諸法を了達す」と説き給へり。知んぬ、法華無益と云ふことを。答ふ、一義に云はく、此の義は自義なるか、経文なるか。一義に云はく、若し法華の成仏ならば天魔治定なるか。一義に云はく、文殊海中の教化は論説妙法と宣べたり如何。
  問ふ、「常に坐禅を好む。深く禅定に入る。常に坐禅を貴ぶ」とも説けり如何。答ふ、一義に云はく、文段を以て責むべきなり。一義に云はく、此の文は法華無益と云ふ文なるか。一義に云はく、此の文を以て禅宗を建立するか。
  問ふ、「唯独り自ら明了にして、余人の見ざる所ならん」と云ふ。故に禅宗ひとり真性を見て余人は見ずと云ふなり。
 

平成新編御書 ―498㌻―

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