（★４９９㌻）
　答ふ、一義に云はく、文段を以て責むべし。経文を見るべし。
　　問ふ、像法決疑経に云はく「一字不説」と。爾らば一代は未顕真実と聞こへたり。真実は只迦葉一人、教の外に別伝し給へり如何。答ふ、此の文は仏説か。若し仏説ならば汝此の文に依る故に自語相違なり。一義に云はく、言ふ所の迦葉は何なる経にて成仏するや。一義に云はく、言ふ所の経文は三説の中には何れぞや。一義に云はく、楞迦経は仏説なるか。
　　問ふ、三大部に観心之有り、何ぞ禅天魔と云ふや。答ふ、一義に云はく、汝は三大部にて宗を立つるか。一義に云はく、三大部の観心は汝が禅と同じきか。一義に云はく、汝は天台を師とするか。一義に云はく、三大部の観心は諸経を捨つるか。
　　問ふ、双非の禅の事如何。答ふ、一義に云はく、一度は法華に依り、一度は法華無益なり。一義に云はく、二義共に天魔なり。一義に云はく、此の義に背かん者は僻事なるか。
　　問ふ、法華宗は妙法の道理を知るや。答ふ、一義に云はく、汝は天魔を治定して問ふか。一義に云はく、汝は法華を信じて問ふか。一義に云はく、妙法を知って問ふか、知らずして問ふか。一義に云はく、汝が問ふ所の妙法は今経に付いて百二十の妙あり。其の品々を問ふか。一義に云はく、汝は此の妙法に依って禅を建立するか。
　　天台宗問答　
　　問ふ、天台宗を無間と云ふ証拠如何。答ふ、一義に云はく、法華を誹謗する故なり。一義に云はく、経文に背く故なり。
　　問ふ、余経無益と云ふ事は麁を判ずる一往の意なり。再往の日は諸乗一仏乗と開会す。何ぞ一往を執して再往の義を捨つるや。答ふ、一義に云はく、今言ふ所の開会とは、何れの教の開会ぞや。一義に云はく、