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『早勝問答』


(★501㌻)
 開会の後も余経を捨つると云ふ文をば知るか知らざるか。
  山門流の真言宗問答 
  問ふ、法華第一と云ふは顕教の門なり、真言に対すれば第一とは云ふべからず。答ふ、自義なるか、経文なるか。爰を以て慈覚大師を無間と申すなり。一義に云はく、真言に対して法華第一ならば亡国治定なるか。一義に云はく、真言は已今当の中には何れぞや。若し外と云はゞ、一機一縁の一往にして秘密とは云ふべからざるなり。
  問ふ、法華と真言とは理同事勝の故に、真言に対すれば戯論の法と云ふか。答ふ、一義に云はく、さてこそ汝は無間治定なれ。一義に云はく、さては慈覚は真言をも謗ずるなり。其の故は理同の法華を謗ずる故なり。
  問ふ、伝教の本理大綱集の文を以て顕密同と云ふ事。答ふ、一義に云はく、此の書は伝教の御作に非ざるなり。一義に云はく、此の書に依って法華を慈覚は謗ずるか。
  東寺流の問答 
  問ふ、真言は釈尊の説と云ふ事、其の証拠如何。答ふ、若し真言、釈尊の説ならば亡国は治定なるか。若し然なりと云はゞ弘法大師五蔵を立つる時、法華を六波羅蜜経の五蔵の第四般若波羅蜜蔵、第五の陀羅尼蔵をば真言と建立し給へり如何。
  問ふ、真言宗を未顕真実とは言ふべからず、其の故は釈迦の説の外に建立する故なり如何。答へて云はく、若し釈尊の説教ならば亡国は治定なるか。一義に云はく、六波羅蜜経は釈迦の説なるか、大日の説なるか。若し釈迦の説ならば未顕真実は治定なるか。他の云はく、釈迦所説の顕教無益なりと。尋ねて云はく、六波羅蜜経は顕教・密教の中には何れぞや。他の云はく、六波羅蜜経は雑部の真言なり。我が家の三部は純説の真言なり。答ふ、助証・正証と云ふ事、全く弘法の所判に見えず。若し弘法の義ならば堕獄は治定なるか。他の云はく、
 

平成新編御書 ―501㌻―

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