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『早勝問答』


(★502㌻)
 真言は速疾の教、顕教は迂回歴劫の教なり云云。自の云はく、自義なるか、経文なるか。他の云はく、五秘密経に云はく「若し顕教に於て修行する者、久しく三大無数劫を経る」と説けり。自ら其の証拠なり如何。答ふ、さて此の経は釈迦の説なるか、大日の説なるか。若し釈迦の説ならば未顕真実は治定なるか。
  問ふ、法華宗は何れの経に依って仏の印契・相好を造るや。顕教には無し。但真言の印を盗むと覚えたり如何。答ふ、之に依って法華を謗ずるか。一義に云はく、汝盗むの義相違せば亡国は治定なるか。一義に云はく、汝法華宗の建立する所の大段の妙法蓮華経をば本尊と落居して問ふか。一義に云はく、釈尊を三部に依って建立する故に驢牛の三身と下すか。若し爾なりと云はゞ、返って汝真言を誹謗する者なりと責むべし。一義に云はく、三世の諸仏の印契・相好、実に妙法蓮華経に依って具足するの義落居せば亡国は治定なるか。又盗人は治定なるか。一義に云はく、竜女霊山に即身に印契・相好具足し、南方に成道を唱へしは真言に依って建立するか。若し爾なりと云はゞ、直ちに経文を出だせと責むべきなり。 
  問ふ、亡国の証拠如何。答ふ、法華を誹謗する故なり云云。一義に云はく、三徳の釈尊に背く故なり云云。一義に云はく、現世安穏後生善処の妙法蓮華経に背き奉る故に、今生には亡国、後生には無間と云ふなり。一義に云はく、法華経第三の劣とは経文なるか、自義なるか。若し爾らば亡国治定なるか。他の云はく、密教に対すれば第三の劣なり。答ふ、一義に云はく、此の義経文なるか、自義なるか。一義に云はく、顕教の内に法華第一なる事落居するか。若し爾なりと云はゞ、さては弘法は僻事なり、顕教の内にして法華を華厳に対して第二、真言に対して第三と云ふ故なり。一義に云はく、真言に対して第一ならば亡国は治定なるか。
  他の云はく、印・真言を説かざる故に第三の劣と云ふなり。答ふ、此の故に劣とは経文なるか、自義なるか。一義に云はく、若し法華に説かば亡国は治定なるか。
 

平成新編御書 ―502㌻―

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