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『開目抄㊤』


(★565㌻)
 袈裟を服すと雖も、猶猟師の細視徐行するが如く、猫の鼠を伺ふが如し。常に是の言を唱へん。我羅漢を得たりと○外には賢善を現はし、内には貪嫉を懐く。唖法を受けたる婆羅門等の如し。実に沙門に非ずして沙門の像を現じ、邪見熾盛にして正法を誹謗せん」等云云。 
  夫鷲峰・双林の日月、毘湛・東春の明鏡に、当世の諸宗並びに国中の禅・律・念仏者が醜面を浮べたるに一分もくもりなし。妙法華経に云はく「於仏滅度後恐怖悪世中」と。安楽行品に云はく「於後悪世」と。又云はく「於末世中」と。又云はく「於後末世法欲滅時」と。分別功徳品に云はく「悪世末法時」と。薬王品に云はく「後五百歳」等云云。正法華経の勧説品に云はく「滅後末世」と。又云はく「然後来末世」等云云。添品法華経に云はく等。天台の云はく「像法の中の南三北七は、法華経の怨敵なり」と。伝教の云はく「像法の末、南都六宗の学者は、法華の怨敵なり」等云云。彼等の時はいまだ分明ならず。此は教主釈尊・多宝仏、宝塔の中に日月の並ぶがごとく、十方分身の諸仏、樹下に星を列ねたりし中にして、正法一千年、像法一千年、二千年すぎて末法の始めに、法華経の怨敵三類あるべしと、八十万億那由他の諸菩薩の定め給ひし、虚妄となるべしや。当世は如来滅後二千二百余年なり。大地は指さばはづるとも、春は花はさかずとも、三類の敵人必ず日本国にあるべし。さるにては、たれたれの人々か三類の内なるらん。又誰人か法華経の行者なりとさゝれたるらん。をぼつかなし。彼の三類の怨敵に、我等入りてやあるらん。又法華経の行者の内にてやあるらん。をぼつかなし。周の第四昭王の御宇、二十四年甲寅四月八日の夜中に、天に五色の光気南北に亘って昼のごとし。大地六種に震動し、雨ふらずして江河井池の水まさり、一切の草木に花さき菓なりたりけり。不思議なりし事なり。昭王大いに驚く。大史蘇由占って云はく、西方に聖人生まれたりと。昭王問うて云はく、此の国いかんと。答へて云はく、事なし。一千年の後、彼の聖言、此の国にわたって衆生を利すべしと。彼のわづかの外典の一毫未断見思の者、
 

平成新編御書 ―565㌻―

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