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『法華取要抄』


(★731㌻)
 №0160
     法華取要抄 文永一一年五月二四日  五三歳
                   扶桑(ふそう)沙門 日 蓮 之を述ぶ
 
  夫以れば月支西天より漢土日本に渡来する所の経論五千七千余巻なり。其の中の諸経論の勝劣・浅深・難易・先後、自見に任せて之を弁ふことは其の分に及ばず。人に随ひ宗に依って之を知らば其の義粉紕せしむ。所謂華厳宗の云はく「一切経の中に此の経第一」と。法相宗の云はく「一切経の中に深密経第一」と。三論宗の云はく「一切経の中に般若経第一」と。真言宗の云はく「一切経の中に大日の三部経第一」と。禅宗の云はく、或は云はく「教内には楞伽経第一」と。或は云はく「首楞厳経第一」と。或は云はく「教外別伝の宗なり」と。浄土宗の云はく「一切経の中に浄土の三部経末法に入りては機教相応して第一」と。倶舍宗・成実宗・律宗の云はく「四阿含並びに律論は仏説なり。華厳経・法華経等は仏説に非ず外道の経なり」と。或は云はく或は云はく。而るに彼々の宗々の元祖等杜順・智儼・法蔵・澄観・玄奘・慈恩・嘉祥・道朗・善無畏・金剛智・不空・道宣・鑑真・曇鸞・道綽・善導・達磨・慧可等なり。此等の三蔵大師等は皆聖人なり、賢人なり。智は日月に斉しく徳は四海に弥る。其の上各々経律論に依り更互に証拠有り。随って王臣国を傾け土民之を仰ぐ。末世の偏学設ひ是非を加ふとも人信用するに至らず。爾りと雖も宝山に来たり登って瓦石を採取し、栴檀に歩み入って伊蘭を懐き取らば恨悔有らん。故に万人の謗を捨てゝ猥りに取捨を加ふ。我が門弟委細に之を尋討せよ。
  夫諸宗の人師等或は旧訳の経論を見て新訳の聖典を見ず、或は新訳の経論を見て旧訳を捨て置き、或は自宗の曲に執着して己義に随ひ、愚見を註し止めて後代に之を加添し、株杭に驚き騒ぎ兎獣を尋ね求め、
 

平成新編御書 ―731㌻―

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