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『清澄寺大衆中』


(★947㌻)
 所謂自界叛逆難・他国侵逼難なり。自界は鎌倉に権の大夫殿、御子孫どしうち出来すべし。他国侵逼難は四方よりあるべし。其の中に西よりつよくせむべし。是偏に仏法が一国挙りて邪なるゆへに、梵天帝釈の他国に仰せつけてせめらるゝなるべし。
  日蓮をだに用ひぬ程ならば、将門・純友・貞任・利仁・田村のやうなる将軍百千万人ありとも叶ふべからず。これまことならずば、真言と念仏等の僻見をば信ずべしと申しひろめ候ひき。就中、清澄山の大衆は日蓮を父母にも三宝にもをもひをとさせ給はゞ、今生には貧窮の乞者とならせ給ひ、後生には無間地獄に堕ちさせ給ふべし。故いかんとなれば、東条左衛門景信が悪人として清澄のかいしゝ等をかりとり、房々の法師等を念仏者の所従にしなんとせしに、日蓮敵をなして領家のかたうどとなり、清澄・二間の二箇の寺、東条が方につくならば日蓮法華経をすてんとせいじょうの起請をかいて、日蓮が御本尊の手にゆいつけていのりて、一年が内に両寺は東条が手をはなれ候ひしなり。此の事は虚空蔵菩薩もいかでかすてさせ給ふべき。大衆も日蓮を心へずにをもはれん人々は、天にすてられたてまつらざるべしや。かう申せば愚癡の者は我をのろうと申すべし。後生に無間地獄に堕ちんが不便なれば申すなり。
  領家の尼ごぜんは女人なり、愚癡なれば人々のいひをどせば、さこそとましまし候らめ。されども恩をしらぬ人となりて、後生に悪道に堕ちさせ給はん事こそ不便に候へども、又一つには日蓮が父母等に恩をかほらせたる人なれば、いかにしても後生をたすけたてまつらんとこそいのり候へ。
  法華経と申す御経は別の事も候はず。我は過去五百塵点劫より先の仏なり、又舎利弗等は未来に仏になるべしと。これを信ぜざらん者は無間地獄に堕つべし。我のみかう申すにはあらず、多宝仏も証明し、十方の諸仏も舌をいだしてかう候。地涌千界・文殊・観音・梵天・帝釈・日・月・四天・十羅刹、
 

平成新編御書 ―947㌻―

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