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『神国王御書』


(★1299㌻)
 此又国王・国人のための父母なり、主君なり、師匠なり。片時もそむかば国安穏なるべからず。此を崇むれば国は三災を消し七難を払ひ、人は病なく長寿を持ち、後生には人天と三乗と仏となり給ふべし。
  しかるに我が日本国は一閻浮提の内、月氏漢土にもすぐれ、八万の国にも超えたる国ぞかし。其の故は月氏の仏法は西域等に載せられて候、但七十余箇国なり。其の余は皆外道の国なり。漢土の寺は十万八千四十所なり。我が朝の山寺は十七万一千三十七所。此の国は月氏漢土に対すれば、日本国に伊豆の大島を対せるがごとし。寺をかずうれば漢土月氏にも雲泥にすぎたり。かれは又大乗の国・小乗の国、大乗も権大乗の国なり。此は寺ごとに八宗十宗をならい、家々宅々に大乗を読誦す。彼の月氏漢土等は仏法を用ゆる人は千人に一人なり。此の日本国は外道一人もなし。其の上神は又第一天照太神・第二八幡大菩薩・第三は山王等三千余社、昼夜に我が国をまぼり、朝夕に国家を見そなわし給ふ。其の上天照太神は内侍所と申す明鏡にかげをうかべ、内裏にあがめられ給ひ、八幡大菩薩は宝殿をすてゝ主上の頂を栖とし給ふと申す。仏の加護と申し、神の守護と申し、いかなれば彼の安徳と隠岐と阿波・佐渡等の王は相伝の所従等にせめられて、或は殺され、或は島に放たれ、或は鬼となり、或は大地獄には堕ち給ひしぞ。日本国の叡山・七寺・東寺・園城等の十七万一千三十七所の山々寺々に、いさゝかの御仏事を行なふには皆天長地久・玉体安穏とこそいのり給ひ候へ。其の上八幡大菩薩は殊に天王守護の大願あり。人王第四十八代に高野天皇の玉体に入り給ひて云はく、我が国家開闢以来臣を以て君と為すこと未だ有らざる事なり。天之日嗣は必ず皇緒を立つ等云云。又大神、行教に付して云はく、我に百王守護の誓ひ有り等云云。
  されば神武天皇より已来百王にいたるまではいかなる事有りとも玉体はつゝがあるべからず、王位を傾くる者も有るべからず、一生補処の菩薩は中夭なし、聖人は横死せずと申す。いかにとして彼々の四王は王位ををいをとされ、国をうばわるゝのみならず、命を海にすて、身を島々に入れ給ひけるやらむ。
 

平成新編御書 ―1299㌻―

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