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『閻浮提中御書』
(★1323㌻)前
疫病を仏のあたへ給ふ。はげます心なり、すゝむる心なり。
日蓮は凡夫なり。天眼なければ一紙をもみとをすことなし。宿命なければ三世を知ることなし。而れども此の経文のごとく日蓮は肉眼なれども天眼・宿命□□□□日本国七百余歳の仏眼の流布せしやう、八宗十宗の邪正、漢土・月氏の論師・人師の勝劣、八万十二の仏経の旨趣をあらあらすいちし□、我が朝の亡国となるべき事、先に此をかんがへて宛も符契のごとし。此皆法華経の御力なり。而るを国主は讒臣等が凶言ををさめてあだをなせしかば、凡夫なれば道理なりとをもいて退する心なかりしかども、度々あだをな□。
美食ををさめぬ人なれば力をよばず山林にまじわり候ひぬ。されども凡夫なればかんも忍びがたく、熱をもふせぎがたし。食ともし。麦□目が万里の一餐忍びがたく、思子孔が十旬の九飯堪ゆべきにあらず。読経の音も絶えぬべし。観心の心をろそかなり。しかるにたまたまの御とぶらいたゞ事にはあらず。教主釈尊の御すゝめか、将又過去宿習の御催しか、方々紙上尽し難し。恐々謹言。
平成新編御書 ―1323㌻―
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